No.279 8月号編集後記

 去る7月2日聖明・朝日盲大生奨学金貸与式に出席しました。
 同制度は1969年聖明福祉協会が朝日新聞の協力を得て始めたもので、これまでに194人がその恩恵に浴しています。1949年、視覚障害者の大学進学は認められましたが、入試を点字で行なったのは同志社大だけで、6年後に私が進学した折も点字入試は日大など2、3校のみ。大半は口頭試問でした。
 また大学によっては「障害ゆえの要求は絶対にしない」という誓約書を書かされたり、口頭で言わされるのは当然という中で夢と悲壮感を抱きながらの進学でした。

 当時点訳奉仕者は図書館に所属して点字盤ないしはタイプライターを使い、広く読まれそうな本に取り組んでいましたが、盲学生が必要とするテキストや参考書は正確さより迅速さが望まれますので、個々にアルバイトなどを頼んでしのいでいました。ですから日本育英会に「視覚障害学生を優先採用するよう」働きかけました。それでも経済的にはどん底で、痛ましい事故も出ました。
 そのような状況の中で、同協会の本間昭雄理事長が奨学金貸与制度を作ってくれたのですから関係者の感激はひとしおでした。

 ただ、気がかりだったのは返済がスムーズにできる仕事に就けるだろうかということでした。応募は定数の倍近くでしたから、委員会を設け学習意欲や連帯保証人など面接で聞き、推薦しました。聞くところによれば返済が遅れている人は1997年からの1人を含めて10人だとか。私は高校から育英会奨学生でしたから、就職浪人2年もあって随分迷惑をかけました。
 東日本大震災の安否確認でも個人情報保護がネックになっていると言われていますが、ここ10年以上盲大卒者の就職状況も全くつかめていません。助成を受け、大がかりな雇用実態調査を計画していましたが、大震災の関係で決まらず、複雑な思いの毎日です。(編集長 高橋 実)

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