No.293 10月号編集後記

 去る8月、文部科学省(以下、「文科省」と略)の「中学後期用教科書概算払調査」を受け、9月に間に合うよう各盲学校に教科書を発送して、24年度からの使用教科書作業は一段落しました。

 盲学校で使う義務教育課程の教科書は文科省が検定した墨字本の中から選び、文科省が教科と点字に精通している専門家に委嘱して編集委員会を立ち上げ、「特別支援学校視覚障害者用に適するように必要な修正、追補、または削除等の内容の一部変更を行なって点訳」(奥付より)という断りを付け、著作本として入札にかけ、落札した出版施設が編集委員会の指示の下、制作発行するものです。

 センターは昨年秋、中学の国語と地理を落札しました。入札で各教科の分冊数と予定ページ数が示されます。私が今回「問題あり」というのは、義務教育で使う点字教科書のページ数というか厚さのことです。それは『社会(地理)』です。私はいつも現場に「センターが世間に対して説明できないと思うこと以外は編集者の指示通り遅滞なく対応するように」と話しています。今回の『社会(地理)』は入札で示された全11分冊2292ページを大幅に超え、編集者の指示通り制作しますと第5巻は400ページ(5.7センチ)になります。現場は「製本はできますが、使用中に割れる恐れ無きにしも非ず」と言います。割れれば製本技術が問われるでしょうが、それよりも教科書として適切な厚さではないと編集者に申し入れ、320ページ(4.8センチ)にして残りを第6巻などに移してもらいました。
 昨年、全国視覚障害児童生徒用教科書点訳連絡会が開いたセミナーで「点字教科書が厚すぎて持ち歩くのに荷物になる。墨字本の人が羨ましかった」というようなパネラーの発言が頭にこびり付いて「こんなことも点字離れになるのでは」と思ったりもしていたからかもしれません。

 ぶ厚い本はセンターでも出し ていますが、比較できないのではないかと思います。児童生徒に指摘されるまでもなく選べないのですから、持ち歩きやすさ、開きやすさ、読みやすさも考慮すべきです。あくまでも予定ページ数で、しかも視覚障害に配慮した編集でしょうから少々の増減はあって当たり前ですが、第7巻も300ページですから、これ1冊で鞄いっぱいは有り得ると思います。
 日本盲人社会福祉施設協議会発行の『点字出版物制作基準』(2008年3月)の「1冊の枚数」という項で「1冊の点字出版物はあまり分厚くしすぎると取扱いが困難となり、逆に薄くしすぎると体裁が整わなかったり価格が割高になることもあるため70〜90枚程度にするのが一般的である。100枚を超えることは避けた方がよい」と書かれています。特に著作本は児童生徒の立場に立って分冊やページ数を考えることが大切です。参考までに書き添えますが、中学の教科書は50音順に東点、日点、日ラ、ヘレンケラーとセンターが関わっています。

 次に、前述しましたようにセンターにもぶ厚い点字本はありますが、学術専門書で1、2点出るか0も沢山あります。分冊を少なくして製本費を低くし、赤字をできるだけなくしたいということからです。「0」の中に高校の『地学基礎』があり困っています。高校の教科書は全国盲学校普通教育連絡協議会に点字出版施設が協力する形で作られています。高校は25年度からの使用でセンターは『社会と情報』と『現代地理』を今回も担当しています。またこの4月から使用するという『地学基礎』は前倒しで前回同様制作しましたが、全8巻727枚が今年は使われません。図、表、グラフだらけと言ってもいい程の厄介な教科です。他施設でもこんなケースはあるのだろうと思いますが、教育現場でも危機感を持って検討していただきたいことです。(編集長 高橋 実)

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