No.307 12月号編集後記

 例年のことですが、当センターの年末年始は教科書製作に振り回されている感じです。
 来年4月から高等部で使用する教科書で、現代文A、地理B、倫理の3点です。センターと日点が点字教科書製作に参入して10余年です。それまで実績とノウハウを培ってきた東点、日ラ、ヘレン・ケラーの仲間入りをするには相当の覚悟と責任が必要でした。後述しますように、俗にいう「うまみ」のある仕事ではなくなっています。しかし「点字技能師制度」を提案した私としては、それをクリアした職員のより奥深い点字の仕事が教科書だと思います。専門家集団の指導と助言を得ての作業だからです。

 教科書は義務教育の場合、文科省著作本の入札という関門はありますが、編集会を傍聴することも許されていますし、校正もその指示の下で進められます。専門家集団は文科省が委嘱した教育と点字に精通している先生方です。職員はそのような過程を経たからこそ、普通校に学ぶ視覚障害児童生徒の教科書や高等部の教科書に手を染められるまでに成長したのです。ただ、児童生徒の減少で教科書の需要は小中高共に激減というより、高等部は需要ゼロもあります。 義務教育の場合は入札前に科目の需要見込み数が示されますが、実数とは大きな差があります。それでも年間20冊以下は今のところありません。

 高等部は普連協事務局が各校に学習指導要領に沿ってどれを採択するかという調査を行なうと共に、生徒の理解度も勘案して科目を決め出版社に依頼されますが、需要見込み数は示しません。製作は5社の話し合いです。来年度は日ラ7、東点6、センター3、日点1の17科目です。
センターが旧学習指導要領で作った地学Tは3年間で需要1冊、全8巻で727枚、うち点図は269枚です。地学基礎は2年間でゼロ。普連協事務局は文科省などに何らかの対策を講じるよう働きかけているそうです。また普連協などで挨拶する学校長は「義務教育の児童生徒は減少しているが、高等部の生徒は増えつつある」と強調しています。

 参考までに書き添えますが、全国盲学校長会などで出している『全国特別支援学校実体調査』によりますと、平成25年4月1日現在の高等部生は839(うち重複219)人です。極論ですが、出版社が限界を感じ、採算の取れる科目だけ選んで後はできないという事態になれば、全点協運動以前の時代に戻りかねません。点字教科書の「灯」を灯し続けるために校長会、普連協、出版社が知恵を出し合わなければSOSは近いと思います。

 そこで提案です。それは、プリンターとバインダーの活用です。古い話で恐縮ですが、センターは1987年に盲大生の学習支援などを目的に立ち上げました。幸い相前後してパソコン点訳ソフトの普及で、センターはテキストなどのプライベートサービスと共に公務員などの受験参考書として試験問題集などの出版の必要性に迫られました。開設時は民家の2階で、製版機、印刷機、製本機などは置く場所も設備するお金もありませんでした。考えあぐね、データ、プリンター、バインダーで複数出版に踏み切りました。案の定一部の出版所と利用者から邪道だと批判されました。
 年々プリンターの性能もよくなり、プリンターやバインダー使用の出版物は広まってきました。普通校に学ぶ児童生徒の教科書も大半がプリンターです。高等部で少部数(1桁)の教科書だけでも、これを取り入れたいのです。製本はともかくとして、亜鉛板の製作費と原版の保存管理だけでも助かります。

(編集長 高橋 実)

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