No.310 3月号編集後記

 2月8日、大阪で全日本ろうあ連盟などの主催による旭日双光章を昨秋受けられた聾弁護士・松本晶行さんの叙勲を祝う会に参加しました。
 私が点毎在職中注目された視覚障害者の堀木、塩見、二見訴訟などの弁護団で活躍され、特に1968年から69年にかけて行なわれた「点字署名有効運動」は大阪では裁判闘争、京都では府議会に訴え、国会でも請願採択と盛り上がり、国に地方自治法を改正させました。点毎でも私が退職する86年頃まで「法律散歩」として法律と日常生活や障害者問題を平易な文章で十数年連載し、好評で点字の単行本も出しました。「点毎の連載で法律を楽しみながら勉強した」という参加者の祝辞もありました。
 私が北尻法律事務所に松本さんをお訪ねしてからかれこれ40年近くになります。私の話を弁護士秘書が活字にしてそれを見ながら応えてくださり、弁護士が「私の声はオットセイの声みたい」とユーモアたっぷりに言われたのが印象的でした。
 松本さんは1939年大阪市生まれ、48年夏、流行性脳脊髄膜炎で完全失聴し聾学校に転入。大手前高校から京大法学部に進み、66年初の聾弁護士として登録しました。65年、文月会などが司法試験に点字を導入するよう国に要望して73年に実現し、81年に竹下義樹さんが初の盲弁護士となりました。聴覚障害者の場合も口述は、司法研修は、裁判所内でのやり取りはできるのか、また前例がないということで、苦悩されたようです。「前例がない」はお役所の怠慢語だと私は思っています。
 司会者が松本さんの一面を次のように紹介していました。「耳が聞こえないことの最大の痛恨事は音楽が聞こえない、そして歌えないということ。カラオケスナックでママさんとデュエットができたら水割りのうまさもひとしおだろう」と。弁護士は謝辞で「視覚障害問題も一緒になって取り組もう」とエールを送っていました。

(編集長 高橋 実)

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