No.311 4月号編集後記

 私は点毎の連載で近藤勝重さんの「しあわせのトンボ」を欠かさず読んでいます。いつかの「6年後の東西」という記事は読み返したほどです。
 書き出しは「新大阪駅でエスカレーターに乗ると右側に立つ。その瞬間にここからは大阪と浪速スイッチが入る。東京駅のエスカレーターでは左側に立つ。それで江戸スイッチが入る。東西文化の違いゆえに身についた習いである」です。
 私はそんな次元の高いことに気が付かず、ただただ腹立たしくさえ思っていました。見よう見まねの文化を取り入れられない視覚障害者にとっては、お葬式の時に「どんな焼香スタイル」と連れの者に聞くしんどさと同じぐらい私は気を遣います。
 先日札幌や仙台に行った時も「どっち」と職員に聞きましたら「東日本だから左でしょう」と言われ、納得しました。広島と小倉に行った時も「どっち」と見よう見まねの文化で生きている感じの家内に聞くと、「前の人に倣えば……」という返事で左に立ったように思います。

 以前、当センターにエスカレーターの実験で来られた業者に「東京と関西で立つ位置が違うのは視覚障害者にとって不便だからどちらかに徹底できないものか」と話したことがあります。返事は「エスカレーターでの上り下りは危ないので、そのような案内はしていません」ということでした。先頃も大阪で前の人に倣って左に立っていましたら後ろの人から嫌味を言われて右にずれました。語弊があるかもしれませんが、こんなことで「見えないとねえ」とは見られたくない私です。

 今度は文化ではなく姿勢です。「危ないですから黄色い点字ブロックまでお下がりください」というJR西日本駅ホームの案内をJR東日本駅ホーム案内にも取り入れてほしいということです。「黄色い線」は私たちには見えません。「点字ブロックは製品名だから」というのは「見えないことへの合理的配慮」を欠いていると私は思います。

(編集長 高橋 実)

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