No.313 6月号編集後記

 来る6月29日は、当センターが居を構える東京都杉並区の区長選挙と区議会議員補欠選挙の投票日です。当然のことですが、杉並区選管が発行する「選挙公報」を「選挙のお知らせ」として本誌号外で出すべく準備を進めております。もちろん全文点訳版です。原稿は22日17時の締め切りで、その後公報掲載順序をくじで決めますので、私たちの作業は19時頃からになるでしょう。これまで同様早ければ24日、遅くとも25日には必要とされるであろう有権者にお届けしますので、ご活用ください。ただ「点字使用者かどうか」確認できない方もおられますので、ご迷惑になった方はお許しください。1人でも多くの区民の皆さまに権利と義務を果たしていただきたいと思います。「選挙のお知らせ」がお手元にいかない場合はご面倒でも当センターか所属する団体の事務局、ないしは区選管にお申し出ください。

 私が敢えてこのことを取り上げましたのは、選挙公報の点字全訳版の発行と製作について全国の皆さまに実態を知ってもらい関心を持っていただきたいという思いからです。
 父親から「てめえの頭の蝿も追えないやつが人のことに口を出したり手を出したりしてはならん」とよく叱られたものです。しかし1954年、進学で上京してからはそれを守っているだけでは視覚障害者に関わる悪環境は絶対に改善されないということを体感したからです。選挙公報製作で対価を得ることも必要でしょうがそれよりも使命感が大切だと思います。
 選挙公報全訳版のプロジェクトを取り仕切っているのは日盲委の竹下義樹理事長で、新年早々「プロジェクトのあり方と対応について」伺いましたところ、丁重な回答をいただきました。また点毎やJBニュースにも「点字資料製作のための研修会の模様」が掲載され、理事長のコメントも出ていました。選挙公報は国の責任で発行すべきですが、とりあえずは国政選挙の全訳版を私たちユーザーの力で結実させたことは嬉しいことです。「都道府県や政令指定都市の首長や議会議員の選挙公報全訳版も出すことが望ましい」と他人事のように言っている国には承服できませんが、広がりつつあることは確かです。ただそれがその自治体に住む人たちと関係者以外の私たちには知らされていないのではないかということです。プロジェクト関係者は「期間が短いから」などの理由を挙げていますが、それは製作に関わることだけで情報提供には関係がないと思うのです。都道府県や政令指定都市の首長選は任期満了前日の30日前には投票日を、また知事はその17日前、市長は14日前には告示しなければならないそうです。プロジェクトや関係マスコミは少なくとも「投票日」「全訳版が出るか出ないか話し合い中」ぐらいの情報は提供して「全訳版」に対する関心を高めるとともに普及に努めるべきだと思います。

 私たちが大学の門戸開放や各種点字試験の実施に取り組み、結実したのは当事者の行動と声、事例の発掘と国民世論の喚起だったと思います。年内には滋賀、長野、香川、福島、愛媛、沖縄、和歌山、宮崎(1月20日任期満了)の8県と新潟、熊本、福岡の3都市で選挙があるそうです。あれほど関心と話題を呼んだ衆院鹿児島県2区補欠選挙も点毎、ジャーナル、J Bは状況を報じていなかったように思います。参考までに書き添えますが、その鹿児島県2区補選の点字公報扉には「全文点訳版 発行鹿児島県選挙管理委員会 製作・編集 鹿児島県身体障害者福祉協会」とあり、断り書きはありませんでした。墨字と読み合わ せをしなければ誤りなどは分かりませんが、「現在」が「げんさい」と記号の使い方で少し気になった程度でした。選挙公報に限らず正確な点字は必要ですが、「しらしめる」努力は最大限重要だと思う私です。

(編集長 高橋 実)

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