No.343 12月号編集後記

 最初は、先頃私が初めて遭遇したことについてのことです。11月初旬、大阪の地域で身障者団体の交流会があり、私達夫婦も参加しました。集まったのは視覚と聴覚の障害者、手話通訳士、ガイドさん等20人程度で、皆さん50代以上の方でした。セミプロの落語とカラオケでした。曲は懐メロで聾の方以外は皆さん楽しそうに歌っていました。聾夫妻もおられましたが、皆さん二人の手話通訳士の身振り手振りで理解できたのか、時折声を出し笑っていました。3時間ほどでしたが、席を立つ人もおらず感心しました。翌日点字毎日時代からお付き合いのあった松本昌行聾弁護士に電話をして「会合などでカラオケに出会ったことはありませんか」とお聞きしたところ、「中途失聴の人なら歌ったり聞いたりした経験があるのでキャリアの通訳士であれば面白おかしく伝え結構楽しめるのではないか。個人的には付き合ったことはあるが会合ではなかった」と答えてくれました。聾の人達と同席の場合、私達はと考えさせられました。
 次に、点字技能師の問題です。去る11月13日、第17回点字技能師検定試験が行なわれました。受験者は、盛岡、東京、大阪、福岡の4会場で、合わせて83人が受験しました。主催者の日本盲人社会福祉施設協議会は受験者の増加も期待してスタート時の2箇所から3箇所4箇所と増やしていますが、今のところ目立った成果はみられません。ネックの一つは、日盲社協が点字に関する二つの制度の立ち位置を未だに整理していないからだと思います。自画自賛になりますが、私が点字出版部会長だったときに、手話通訳士が国家試験の下、社会的活動が年々大きくなるのをみて、視覚障害者の職域開拓と点字の資質向上で魅力ある点字を目指して「点字技能師」制度を提案して当時の本間昭雄日盲社協理事長が、日盲委、日盲連、校長会に働きかけ実現できました。当時国は規制緩和を打ち出し、国家資格廃止の方向でしたので、働きかけてもアウトで「士」を使用できませんでした。1回目の東京は大雪でしたが大阪と合わせて646人中577人の受験者でした。2回目144人、3回目109人でしたが、その後は二桁どまり。私が常務理事時代、事実上全視情協が主導していた「点字指導員認定」と競合しかねないとして2、3回話し合いをしましたが、私の退任で頓挫していました。その後、「日点協通信」(2013年6月10日)に掲載の藤野克己さんの「点字技能師の身分の確立についての一提案」の文中後半にその動きがありますので紹介いたします。 2007年10月に、本間昭雄日盲社協理事長(当時)から「点字認定制度のあり方の整理」についての諮問がありました。これは、日盲社協が実施する点字に関する二つの資格制度(点字指導員、点字技能師)がバラバラに存在しているので、二つの関係性を整理せよという内容でした。この諮問を受けて2008年1月15日に「社内検定試験、点字指導員資格認定講習会等調整委員会」が発足しました。委員は、情報サービス部会から岩上義則部会長(当時)他3名、点字出版部会から高橋秀治部会長(当時)他2名の計5名で、私は途中から呼ばれて参加しました。委員会は計3回の会議を経て答申書をまとめ、2008年4月10日付けで理事長に提出しました。答申の主な内容は、以下の通りです。
1.二つの制度相互の深い連携を図る必要がある。@まず社内検定を受ける。A次の段階で点字指導員資格認定講習会を受ける。ただし、当分の間は、課題文審査の過程を経て点字技能師資格を持たない人の受け入れが必要と思われる。B更にレベルアップを図る機会として、点字指導員専門研修会を設ける。
2.社内検定試験については、学科試験および実技試験の何れか一方を合格した人に一部合格書を発行する必要がある。
3.点字指導員資格認定講習会では、点字技能師資格取得者に対しては事前の課題文審査を免除する必要がある。また、講習会の内容は、「点訳の手引き」の理解を深めることと、点字指導者としての技術の向上を重点的に行なう。
 ご存知のように、2.と3.の前半についてはその後実現しています。このように、点字技能師→点字指導員という流れが5年前に既に示されています。この図式が確立すれば、結果的に点字技能師検定試験の受験者が増えることに繋がると思います。
 珍しく今年は、岡本情報サービス部会長に二度も会い、また大沢点字指導研修委員会委員長に電話をして9年近くもたな晒しにしている答申につき聞いたところ、二人とも具体化に異論はないと答えてくれました。肥後点字出版部会長も異論はないとしており、中山日点協事務局長は、態度で示してくれない限り信用はできないと怒りながらも環境づくりに力を入れていると言います。今回も聴力障害情文センターの石原さんに聞きますと、手話通訳士の受験者は相変わらず千人前後で昨年までの27回で合格者は3405人。その35%は視覚に係る仕事に従事しているそうです。点字技能師は16年間で331人が合格です。その内、何人が資格を生かして仕事をしていますか。当センターに資格者は7人います。日盲社協加盟施設に何人の資格者が働いていますか。しかし「日点教通信」(11月10日)を見て驚きました。諮問も答申もそっちのけで、またたくさんの人で「検討会」を設けようなどと合意していることで日盲社協はお金と暇のある人が多いんだと思わざるを得ません。準国家試験を発展させられない主催組織に未来はあるのでしょうか。
 (編集長 高橋 実)  

 編集後記
  
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