No.344 1月号編集後記

 謹んで新春をお喜び申し上げます。今年もセンター並びに本誌「視覚障害」をお引き立てくださいますように、切にお願い申し上げます。
 例年慌しい年末を送り新年を迎えるのですが、今回は年末に「1月14日日盲連の竹下義樹会長や筑波技大の藤井亮輔教授等4人が発起人協同代表になって一般財団法人一枝のゆめ財団を立ち上げる」というビッグニュースが流れてきました。詳しいことは次号で紹介できるかと思います。危機に遭遇している視覚障害者の暮らしの中で「三療業に活力を与え三療の伝統文化を未来に繋ぐ活動の拠点作りが急務」(趣意書の一部)と提案しています。些か遅きに失した感は拭えませんが、これまでに例を見ない壮大な構想なだけにその経緯と実現が注目されます。
 それと共にあはき法第19条意見訴訟問題について当事者組織は下より、当事者はどう取り組むべきかを早々と対策を打ち出し、行動すべきだと思います。「点字JBニュース」第6077号の「あはき法第19条訴訟問題について対策会議を開催」の記事などこれらに関するニュースは殆ど守りの雰囲気で画期的な攻めの姿勢が見られません。竹下会長が「視覚障害者を含むあはき業界がどういう立場に立たせられるかが問われる裁判であり、同時に無免許者の横行を含めた現状の中、按摩マッサージ指圧業が視覚障害者の中心的な職業として今後も維持していけるかどうか注目すべき裁判である」と述べたと記載されていますが全くその通りです。「そのためには」が議論されているようには思われません。竹下会長のコメントを行動に移す空気が全く感じられないのです。晴盲共に職業選択の自由を共有しながら按摩を選択した視覚障害者には合理的配慮を要求する。その選択の中には機動力と字無力をフォローするヒューマンアシスタント制度を取り入れさせることも有りです。
 言うは易し行なうは難しで、19条を具体化するには予想以上の知恵を絞り汗をかかなければならないと思います。国と当事者組織の間では対話と行動がそれほど繰り返されているかです。原告の平成医療学園グループは「国が半世紀もの長い間視覚障害者に対する無策を暴いてそのツケを転職として按摩を選ぼうとしている晴眼者の憲法に保証する職業選択の自由を奪っている」と最もらしい訴えをしているというのは私の思い過ごしでしょうか。先輩諸氏が知恵と汗で国に作らせたあはき法第19条に魂を入れさせる働きかけをするのが三療関係者に課せられた義務なのではないでしょうか。医療の世界だけではありませんが、裁判とは言え争い今は勝訴したとしても、また近い将来形を変えて争わなければならないときが必ずやって来ると思います。
 当センターが5ヵ年計画で実施していた「視覚障害者の終業実態調査」は昨年末で完了しましたが、その3年目の2016年に行なった「視覚障害者就労実態調査―あはき施術所・視覚障害関係施設・音楽家(特に邦楽)」でもそれらのことが如実に指摘されています。この理療プロジェクトチームには「ゆめ財団」の協同代表になっている藤井教授を始め、矢野忠明治国際医療大得人教授や坂井友実東京有明医療大教授等にも最大の協力を頂き、数多くのデータの中でも信頼できる大規模調査として評価されているものですが、晴眼業者に比較して、視覚障害業者は高齢で零細で低収入なのです。年収二百万円以下の施術者が6割を占めています。
 内容は少し違いますので参考にはならないのかも知れませんが、私達が国会に提出した「国に求める視覚障害者雇用促進のための6項目」の請願が衆参両院本会議で全会派一致で採択されたのも比較にならない圧倒的に多い晴眼者社会の理解と支援が得られたからです。法的効力は無いにしても、相前後して各種試験や各種資格試験に適性と能力があれば点字などでチャレンジできるようになったのです。
 19条では「職域の開拓」も唄っています。1950年代から60年代前半にかけて、盲学校や光明寮などで新職域の開拓と銘打って産業マッサージやピアノ調律師の養成、養鶏・養豚の飼育、椎茸栽培などの実践と研究が行なわれました。産業マッサージは内容も変わっていることでしょうが、ヘルスキーパーとして結実しましたが、今は手放しで喜んではおられない状況にあると言います。ピアノ調律師は、浜松市を中心に京都や大阪で一時期成果を挙げましたが、IT機器などの発達で消えて行きました。養鶏や養豚にしても、自助努力だけでは晴眼者には太刀打ちできませんでした。家族などの協力で環境が整備されておれば自立できたのかも知れませんが、この時代共助控除があって、初めて自助努力が報われるのだと思います。
 経営のSOSは、晴盲共に無免許者であり景気であり柔整師であると挙げています。一方、経営が安定している業者の大半が柔整の資格を取得していますが、視覚障害業者の場合取得率は1割ほどだと言われています。その傾向を逸早く取り込んだのか、大阪府立大阪南視覚支援学校は平成27年度から柔整科を設置しております。ただ盲学校関係者は柔整科の設置についての未来についてコメントしていないように思います。古くて新しい新職域開拓は私達学生の頃も決まり文句でした。当時私達は、自分のこととして取り組みましたが限界はありました。しかし精一杯行動しました。ピンチの今こそ諸先輩の意思に学び、スローガンに終わることなく視覚障害者の個々の適性と能力と可能性に沿った仕事を関係者は生み出し、解決に力を注がなければ、視覚障害者の立ち位置は一層ピンチに追い込まれると思います。
(編集長 高橋 実)

 

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