No.345 2月号編集後記

  2012年から5年計画で実施してきました「視覚障害者就業実態 調査」は昨年末予定通り完了することができました。これ一重に 高額のご助成を継続してくださった全国労働者共済生活協同組合 連合会様など、数多くの助成団体を始め、この企画に賛同しプロ ジェクト委員としてご協力いただいた関係各位の賜物と深く感謝 を申し上げる次第です。最終回の昨年は、『国家公務員、地方公務 員、教員の採用状況とその配属先についての全国調査』として第 1回とほぼ同内容で行ないました。ただ初回は、「国家公務員の採 用は人事院だけでなく各府省庁やその出先など地方での選考採用 などもあり得る。検討し直しては」ということで、急遽調査対象 から外しました。また今回は、東京23区と盲学校理療科教員も調 査対象に加えました。理療科教師も最近では全体の2割前後は晴 眼教師が占めるようになり、全盲教師のいない盲学校もあるそう です。この調査については次号で報告する予定です。
 実は「改正 障害者雇用促進法や差別解消法などの施行ないしは制定が想定さ れていても4年間では結果にあまり期待はできないだろう」とい う意見もありましたが、やはり当たらずとも遠からずの結果で残 念でした。しかし私達は1960年代から40年間「これでもか、これ でもか」としつこく繰り返し声をあげ行動し、その結果を文字に して社会に明らかにしました。2000年代に入り個人情報保護とい う新たな壁に阻まれて「固有名詞付き」の運動は難しくなってき ましたが、それなりの成果は出ていると思います。
 1回目と3回目の調査を受けて2回目と4回目は視覚障害者の 生き様を「事例集」として世に送り、個々人の奮戦記に感動と共 感を共有することができました。しかしこの世界にも間違いなく 高齢化が広がりいわゆる後釜の養成が必要です。チャレンジャー が必要です。先頃点字受験のことなどで人事院に聞きました。国 家公務員試験に点字が認められてから26年になりますが、この間 に46人しか受験しておらず、合格者は未だに一人です。地方公務 員や教員採用で点字受験者がどのくらいいるのかは調査していま せんので何とも言えませんが、地方自治体や教育委員会が悲鳴を 上げるほど若者が挑戦してほしいものです。盲学校の先生曰く「大 学進学は多いのですが」だそうですが、その大卒者達はどのよう な職業自立をしているのか、一日の先輩として気になります。諸 先輩が直向な努力で切り開いた大学で学び、古めかしい言葉ですが、世のため人のため自分のために働いてもらいたいものです。
 また忘れてはならない一つは、先輩諸氏が死守してきた職種を 守り発展させることです。2014年の第3回目の調査は『あはき施 術所・視覚障害関係施設・音楽家(特に邦楽家)』でした。申し上 げるまでもなく3分野とも視覚障害者の伝統職種ですが、何れも 前途多難そのもの、ピンチです。あはきはまだ理教連や日盲連、 全鍼師会などが現実と未来の狭間で寄り添って問題解決に当たっ ていますが、点字図書館など盲関係施設における視覚障害職員や 音楽家の明日をフォローする組織はあるのでしょうか。盲関係福 祉施設の大半のルーツは、当事者が創設ないしは理解者が作り上 げたものです。
 2014年の調査で何人かの管理者が「視覚障害者の 働く部署がない」とか「視覚障害者が何ができるかわからない」 とか「介助者制度などは知らなかった」とか「介助者制度は面倒 だから使わない」とかいった回答をしているのには驚きました。 よく「ボランティアあっての施設」と聞きますが、「視覚障害職員 あっての施設」でなければ真の当事者サービスはできません。全 国の盲関係施設が加盟している日盲社協は、2001年「視覚障害者 就労促進のための委員会」を立ち上げ、ノウハウを報告書として まとめましたが、以後アドバルーン揚げも行動もしていないよう に思います。就職先を広く求めることは重要ですが、加盟組織、 それも全盲者がいないという施設が増えていると聞きますが、そ んなことが本当であっていいのでしょうか。
 次に音楽のことですが、当センターでは間もなく『視覚障害音 楽家リスト』を作成して、全国の自治体関係部署や社協など関係 方面に配布してその活用をお願いすることになっています。この 音楽家リストも第1版は1995年に、第2版は2005年に、そして今 回やっと第3版の発行に漕ぎ着けました。掲載は個人108人、10 グループ、支援は7組織です。版を重ねるごとに掲載音楽家は減 少しています。高齢で廃業したり、習いに来る生徒がいなくなっ たなどで看板を下ろした人もいました。未だに「芸術の世界に晴 盲の壁は無い。障害を冠にしたものには関わらない」と掲載され ない方も多数おられたり、センターの調査不足で依頼から落ちて いる方もおられると思います。時代の趨勢と全国の盲学校で1校 しか音楽コースが無いということも併せ持っての背景かも知れま せん。しかし音楽家組織を持つ日盲連を含めて関係者はもっと危 機感を持って処すべきだと思う私です。(編集長 高橋 實)


 

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