[戻る][ホームページに戻る]

2011年2月10日発行 第67号 社会福祉法人 視覚障害者支援総合センター

支援センターだより

皆さまへ

理事長 高橋 実

 遅ればせながら新春をお慶び申し上げます。皆さんは年末年始をいかがお過ごしでしたでしょうか。最近は悪い風邪が流行しつつありますし、鳥インフルエンザ、新燃岳の爆発的噴火で火山灰が降ったり、また早くも花粉対策など想定外のことが続いております。これからが思いやられます。どうぞ体調には充分ご注意のうえお過ごしください。

 大雪の被害を受けられている皆さんも多数おられ、心よりお見舞い申し上げます。前号でもちょっと触れましたが、私が過ごした子どもの頃の北海道は雪が多くて当たり前、田舎道を車が走るなど考えられもしませんでした。私なんかも馬そりで出かけたりしたものです。したがって玄関への出入りも、外の雪が多く階段があって当たり前でした。元旦の神社参拝も私の前と後ろに兄弟が歩いていました。そうでないと私が道を外れて田んぼの中に迷いこんでしまうからです。

 今年もこんな世の中ですから神頼みも少しはありかと思い、元日に大阪で2カ所の神社に行ってきましたが、我が家の近くは10分足らず並んだだけでしたが、もう1カ所は1時間近く寒いなか並びました。その点、4日の東京での2カ所の参拝はほとんど人もいませんでした。差し障りがあって失礼なことになるのかもしれませんが、私はラーメンが大好きで1日3食「ネギ抜き」のラーメンを食べても飽きません。出張などの場合、職員によっては「もういいです」なんて言われるぐらいですが、それでも並んでまでは食べたいとは思いません。しかし、神社参拝だけはやむを得ないとだんだん思うようになりました。神頼みのことが多くなってきたのでしょうか。それとも歳のせいでしょうか。今年は神頼みもさることながら、皆さんにうんとうんと応援していただかなければならないことがありますので、よろしくお願いいたします。

 5月に小規模作業訓練施設「チャレンジ」設置14年目、7月に日本初の盲学生情報センター(現・視覚障害者支援総合センター)開設25年、11月に関係者には「まさか」と驚かれた法人取得15周年という記念すべき年になりました。これまでに育ててくださった全国津々浦々からの皆さまの物心両面にわたるお力添えには、感謝の言葉をいくら申し上げても言い尽くせない心境です。本当にありがとうございました。

 前述しましたように記念すべき年ですから、いくつかの記念事業を企画したいと考え、まず『視覚障害』1月号から「チャレンジ賞・サフラン賞 受賞者は今」という連載で1回目から9回目(今年)までの方に過去・現在・未来について書いていただき始めて、三宮麻由子さん(第2回サフラン賞受賞者)までたのしい原稿を寄せてくださっております。

 2つ目は一昨年からから昨年にかけて『視覚障害』に連載しました、「視覚障害者の暮らしと文化を豊かに――企業の歩みと私の思い」を12回にわたり12人のトップと仕事を紹介しました。好評だったのと不特定大多数の方に知っていただきたいということもあって、加筆していただいたうえで墨字と点字で単行本として出版したいと思い、目下助成先を探しているところです。

 3つ目も出版ですが、『視覚障害』に連載中の「先達に学び業績を知る」を一昨年第1弾として51人をまとめ単行本化して好評を博しましたので、今度は2012年3月まで掲載する人たちをまとめた、同書の第2弾を来年度末に出したいと思っております。

 これは記念事業ではありませんが、第8回の「競い合い、助け合う コンサート2011」とドッキングさせて「チャレンジ賞・サフラン賞の贈呈式」と「記念式典」などの事業も検討しております。セシオン杉並を利用したいと思っていますが、申込みが7カ月前で、実施はできれば9月から10月にかけてと思っているものですから、もう少し後になって決定すると思います。コンサート出演者もいつも賛助出演していただいている女声コーラス「コール・トゥインクルスター」や筑波大学附属盲学校ハンドベルクラブOG会「あかね」、芸大4年で今春大学院を目指している声楽の橋本夏季さん、箏曲家の澤村祐司さんらに出演をお願いしていますが、正式に日時が決まらないと先方の都合もありますので、決定とまでは今のところ申し上げられませんが、その折は絶大なご支援をお願いいたします。

 3月11日には新年度の事業計画や予算を決める役員会が予定されております。それまでにはもっともっと実のある事業を提案したいと思っております。

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

チャレンジ 飛躍の年に

高橋 和哉

 「盲学校を卒業して、視覚障害者だけのチャレンジに通所を続けることが、果たしてその方にとって、幸せなのか?」

 これが、チャレンジに関わり始めた最初の疑問でした。
 盲学校で暮らすことだけでも、多少一般社会と離れてしまうのに、卒業後も同じような環境で暮らすと、どんどん一般社会から離れていって、最終的には同じような境遇の人たちとしか、分かり合えないようになりそうで、非常に悲しいことだと思っていました。悲しいのは、彼らだけでなく、社会全体も同様です。

 数年前から、視覚障害者だけでなく多くの障害者を受入れてきました。障害の違いからくる問題も多く起きましたし、これまで見えなかった問題も顕著になりました。もちろん、問題が起きるとそれを改善していく努力、家族を含めた話し合いも続けてきました。
 この方針に、最初は戸惑った方も多かったようです。それは「安心」と「幸せ」を混同しているからだと思っています。同じ仲間で暮らすと「安心」は増します。しかし、同じ仲間としか接しないことは、多くの問題をやり過ごして解決能力を磨く機会を失します。また、様々な機会(=「幸せ」)を見過ごして、チャンスも得られません。
 結局は損をしてしまいます。個々の人間が成長しなければ、それが構成している社会全体も衰退します。
 「障害者も社会参加を!」と言ってますが、社会参加するには、社会を知らなければできません。そういう意味でチャレンジは、小さいですが、多様な社会を保ち続ける努力が求められます。
 多くの利用者はストレスを感じていると思います。移動だけでもストレスを感じるのに、目的地でもストレスを感じるのは、かわいそうですが、それが社会で生活する力になります。「チャレンジ」で、ストレスフリーになるような擁護をすることは、彼らをディスエンパワメントすることにつながります。

 前置きは長くなりましたが、要はこの考え方が、来年度から私達の給料にもなる訓練等給付費に盛りこめられました。3障害(身体・知的・精神)を区別せず、通所を希望する障害者を受け入れ、そこから社会参加できる人材を出すことに、大きなインセンティブを与えています。

  これまで、「チャレンジは、いろんな方がいて大変でしょうけど、頑張ってくださいね。」と労をねぎらう言葉を多くかけられましたが、この4月からは、これまでの努力を給付費で応えてくれるようになりました。
 これまで同じ性格の施設の助成額は横並びで、繰越金が認められませんでした。この4月からは、施設により給付金額に差が出てきました。また、繰越金が認められたので、経営努力により、土地購入や作業所拡張など多大な資金を必要とする計画も進めることが出来ます。職員の能力差も考慮に入れて給付をします。
 障害施策は、時代の流れに左右されますので、喜んでばかりはいられませんが、これまでセンターにおんぶに抱っこのチャレンジが独り立ちできる可能性が大きくなりました。
 これからチャレンジの果たす役割は、特定の社会で頑張るのでなく、様々な社会で活動することです。その活動を通して、様々な障害者が通所を希望してくれることを願っています。

  具体的に、3年後には、ものづくり依存から脱皮し、ユニバーサルな情報提供施設を目指します。チャレンジ利用者が、自分の障害だけでなく他の障害を理解することによって、情報提供、まちづくり等、多くの分野で力を発揮することができます。それを信じて、これからも自治体、NPO、助成団体と協働で事業を進めていきます。

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

「きょうされん第34次国会請願署名・募金」に
ご協力いただきましてありがとうございます

高橋 和哉

 「チャレンジ」のような小規模作業所に関わる人たちが、毎年、テーマを決めて、日本の障害者施策をより良くしていこうと国会請願運動を行っています。
 今回はじめて、センターを支える会会員全員に、署名・募金をお願いしました。1月28日現在、署名は346名、募金額325,300円も集まっています。本当にありがたく思います。
 署名は国会へ、募金は国会請願をする方々の運動資金として、4月に団体へ送ります。
 今の日本の福祉政策は、国連で2008年に発効した障害者権利条約に批准できないほど貧相なものです。
既に高齢社会に入っている日本は、先進諸国の中で一番に超高齢社会に突入します。それは移動制約者、生活困難者が増大することも意味します。
 そのような日本が、障害者権利条約に批准できないということは、明らかに自己矛盾しています。早くこの状況から脱しないと、そのしわよせは、社会的弱者にふりかかります。

 ちなみに、署名した国は147カ国、批准した国は95カ国です。(2010年10月現在)

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

「まちづくり」事業

高橋 和哉

 「まちづくり」は公共です。よって、一番大事な視点は、出来る限り多くの方が不自由なく移動が出来、くつろげる空間を創出し、その状態を保ち続けることです。
 よって、専門家主導で計画を進めるのでなく、そこに住んでいる、また関わっている人たちが話し合って、主体となり、専門家をうまく動かす必要があります。
 今、抱えている大きな問題は、「主」となる住民、その中でも移動に制約がある障害者(「主」の中の「主」といえるでしょう)の勉強不足にあります。
 「主」である障害者に求める能力は、自分の障害を理解し、他の障害を理解した上で、自分の意見を発信できる障害者です。
 国、自治体、コンサルなどまちづくりを行う全ての団体が、このような障害者を待ち望んでいます。ある障害者団体は、障害者を対象とした、他の障害を理解する研修を開催して人材育成に力を注いでいます。
 このような障害団体の後塵を拝しますが、日常的に他の障害者と接する環境のチャレンジにとっては、この分野で、利用者の可能性を大きく伸ばすチャンスです。また、彼らが、社会に貢献できるチャンスでもあると考えます。

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

『視覚障害――その研究と情報』ご購読継続のお願い

伊藤 真弓

 平素より月刊『視覚障害――その研究と情報』をご愛読いただき、まことにありがとうございます。本誌面を借りまして、愛読者の皆さま、情報提供や誌面作りにご協力くださる先生方に対して、改めまして心から謝意を述べさせていただきます。
 本誌は、視覚障害に関わる教育・職業・福祉・文化・芸術などの専門分野の記事を、それぞれの世界で研鑽を積んだ先生方にご紹介・ご執筆いただき、上質で新鮮な情報を皆さまに提供しています。視覚に障害がありながらも、自ら活路を開いてきた諸先輩方を紹介する人気連載「先達に学び業績を知る」のほか、昨年より始まった連載「ロービジョン・リレー・エッセイ」では、これまで知られているようで知られてこなかったロービジョンの実態を専門家の先生方がご紹介しています。そして4月号からは、センターのコンサートにも過去3度出演いただいている和太鼓奏者であり社会福祉士の片岡亮太さんが、1年間のニューヨーク留学生活を報告するフレッシュな新連載がスタートします。
 2009年度よりDAISY版を加え、墨字・点字・テープ・FD・メール・DAISYの6媒体による、いわゆるバリアフリー出版を行なっております。年間購読料は、12冊で6,000円(テープ版普通速のみ7,200円)です。既にご愛読くださっている方は是非ご継続を、そしてお読みでない方は1度手にとっていただけたらと思います。在庫があるものに関してはバックナンバーも1部700円でお分けしておりますので、担当の伊藤までお問い合わせください。
 様々なニーズに対応し、常に皆さまに愛される誌面作りに努めて参ります。
 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

平成23年度奨学生公募のお知らせ

伊瀬 飛鳥

 平成23年度の『みずほ奨学金』『メイスン奨学生』『聖明・朝日盲大学生奨学金』を募集します。
 視覚障害者で大学・短期大学(通信教育を除く)に在籍し、身体障害者手帳の交付を受けておられる方が対象となります(※みずほ・メイスンは障害者等級1級〜2級の方、聖明・朝日は障害者等級1級〜4級の方)。
 皆様の中で対象となる方をご存知の方がおられましたら、是非センターまでお知らせください。規程と応募要項を点字と墨字でお送りいたします。
 応募締め切りは3月31日(必着)です。
 書類はセンターで選考し、主催団体に推薦書を添付して提出いたします。推薦書は形式的には理事長名で行いますが、その下書きともなる事柄(進学の理由、奨学金の必要性、将来の希望等)を簡潔に御書き添え下さい。
 なお、3つの奨学金を同時に受けることはできませんので、複数応募したい方は受けたい奨学金の優先順位をメモ書きや付箋等で添えてください。ひとつだけ応募の方は、そのままで結構です。
 選考結果については4月下旬、主催団体とセンターからご本人に連絡致します。
 仮に何らかの事情で奨学生から外れた場合でも、お申し出により当センターにてテキスト等教材を点訳ないし朗読させていただきます。詳しくはセンターまでお問い合わせください。

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

第20回 専門点訳者実践養成講座の開催について(予定)

村上 晴香

 本養成講座は視覚障害学生ならびに専門職にチャレンジする人・従事している人たちのテキスト・学術書・参考書・専門書等を正確かつ迅速に点訳できる点訳者の養成を行う目的で、1988年よりほぼ毎年開催しております。2010年度は日本語初級、日本語中級、音楽基礎、英語、理数、情報処理、実践、邦楽の全8講座、延べ41名の方が受講してくださいました。
 来年度(2011年4月以降)も各種専門点訳の充実を図るとともに、受講者の方のニーズにできるだけお応えできるよう企画をしております。講師はこれからお願いする予定です。また開催時期ですが、5月に開講式を行い、その後順次各講座を開講していく予定です。会場と開講予定講座は下記の通りです。
 ご関心のある方はメール・FAX・電話にて応募要項をご請求ください。要項の発送は4月以降を予定しております。なお、実施にあたり講座数・内容など変更する場合もございます。何卒ご了承ください。またご不明な点がございましたら、担当の村上までお問い合わせお願いいたします。皆さまの参加を心よりお待ちしております。

【会場】 当センター会議室
【開講予定講座】
@日本語初級/A日本語中級/B日本語上級/C音楽基礎/D英語/E理数/F情報処理/G実践/H邦楽(点字楽譜利用連絡会共催)ほか 全10講座

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

好評の点字版『鉄道手帳』第2弾を計画中です

輿水 辰春

 社団法人昭和会館様よりご助成いただき、盲学校や点字図書館などに寄贈しました点字版『鉄道手帳』の発送作業が去る1月半ばにほぼ完了しました。発送の際、点字図書と一緒に「受領ハガキ」を封入し、受け取り時にご返信いただくのですが、そのハガキの通信欄には「早速鉄道好きな方に貸し出しました」「生徒たちは大喜びで取り合いです」「順番待ちが続きそうです」「生徒に何よりのクリスマスプレゼントになりました」「以前いただいた『基本地図帳』も大活躍しています」などなどの嬉しいお言葉が記されておりました。本は読まれてこそ価値が出てくるものですから、喜ばれ、愛される本を作ることが何をおいても大切だということを、数々の感謝のお言葉の中から、改めて学ばせていただいた次第です。社団法人昭和会館様を第一に、本書の製作に関わってくださった皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。

 さて、点字版『鉄道手帳』は、既にお知らせしました通り、原本よりJR線と国鉄・JRから転換した第3セクター路線を抜粋して編集した図書です。そのため、製作途中に視覚障害鉄道ファンの方々から「JRについての読み物は比較的多いけど私鉄は……」という声をたくさんいただきました。私鉄路線の分布は地域毎の偏りが多く、また点図を描いた際にはJR路線のみよりも複雑になります。そうした難しさを飲み込んだ上で、本書の好評を受け、このたび私鉄編の製作に取り組むことが決定いたしました(このため公営交通については、その次の企画でとなりました)。発売日・価格などの詳細は未定ですが、原本は前回同様とし、その中から私鉄のみを取り上げ、地図編・読み物編とに分けて編集していく予定です。昨今の鉄道ブームを眺めながら、視覚障害者にも晴眼者と同じ情報が提供されなければと思っています。

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

『視覚障害』の「編集後記」転載について

高橋 實

 「センターの顔」月刊『視覚障害――その研究と情報』の2月号(No.273)が、講読してくださっている皆さんのお手元に届いたことと思います。内容については、まだまだ知恵を出して誌面作りをしていかなければならないと思っておりますので、お力添えください。日本広しといえども、『視覚障害』のような専門誌はないと思いますし、点字・墨字・テープ・DAISY・フロッピー・メールの6媒体を同価格同内容で発行している雑誌も無いと思います。ただ、『視覚障害』に限らず図書なども広がりません。時代の趨勢と言ってしまえば片付くかといえば、そうはいきません。センターの「営業力」も問われているのだと思います。機会がありましたら、是非ヒントを与えてください。それに心配なのがテープ版です。だんだん市場からカセットに関わるものが消えていきつつあるようで、センターの消磁器も騙し騙し使っているようです。最後の1人までと思っておりますが、零細施設にそれができるのかどうかです。

 次に今回、転載しました月刊『視覚障害』の「編集後記」ですが、東京ヘレン・ケラー協会が発行している『点字ジャーナル』11月号の「言霊文字霊」欄で、当センターが発行している『表記辞典』を取り上げ、「点字の質を低下させているのは『表記辞典』」などととんでもないことを書いていました。

 憶えてくださっている人もおられるかと思いますが、少なくとも「点字の資質を向上させると共に普及・啓発と仕事に点字をつなげよう」と「点字技能師制度」を提案したのが私ですから、その張本人が冗談にも「点字の質を下げよう」などといった本を作るはずはありませんし、お忙しい点字の専門家の皆さんがそんなことに力を貸してくださるとは常識で考えられません。

 本誌を発行している点字出版所には、点字で生活しておられる職員が多数おられます。それなのにです。「水谷昌史氏の誹謗と中傷、名誉毀損、営業妨害(これは同業として)に終始した原稿をなぜ取り上げたのか」という抗議と謝罪広告を発行人である同協会理事長と編集長に対し内容証明郵便で2度送りました。理事長からは梨の礫ですが、編集長からは「表現の自由は侵すことができないことだ。反論があるなら相談してください。ページを提供します」という意味の返事をもらいました。これ以上同会とは関わるつもりはありませんが、『視覚障害』をお読みでないセンターを支えてくださっている皆さまに「こんなことを取り上げ、表現の自由を守るためにと言う大手誌の発行人や編集人もいるんですよ」ということを知っておいていただきたいと思い、ご報告させていただきました。

 同協会には毎日新聞人が沢山おられ「酸いも甘いも」体感されてきた人たちです。そんな人も含めて事実と相違した意見を「表現の自由を守る」などとカッコイイことを言って取り上げられたのでは、『点字ジャーナル』は言いたいことを早いもん勝ちで載せ、反論があればいつでもどうぞは、大手誌のとるべき態度ではないと思います。私が『点字毎日』で「読者の広場」欄を担当していた頃は相対立することであれば先方にも真意を聞き、「同時掲載」しました。今回の問題はしつこいようですが、「相反する」ことでは全くないのです。

 「署名原稿は第一義的には筆者の責任」と福山氏は言っていますが、水谷氏は「お詫びと釈明」で「表現が短絡的であり掲げた例が不適切であったことを反省し……ごめんなさい」。また結びで氏は「身から出た錆とはいえ新年早々こんな文を書くことは不本意です。もう疲れました」と書いていますが、これで福山氏の言う「一件落着」になるのでしょうか? また、氏は「……辞典に従って点訳すると決められているので……ともらす職員やボランティアはたくさんいる」と書いてもいますが、当然のことですがセンターが強要しているかのように言われるからなおさら福山氏は間違ってしまうのです。

 本書の前書きで「この表記辞典は、幅のある語の書き表し方や切れ続きについての点字表記の一つのあり方を示したものである。したがって、この辞典の点字表記が唯一絶対のものでないことは言うまでもない。また、この表記辞典とは異なる点字表記の仕方を否定するものでもないことを明記しておく。」と書いているように、専門家である水谷氏ですから抽象的なコメントではなく、具体的に問題点の取っ掛かりを提案していただければ良かったと悔やまれます。

 私は『表記法』は点字の憲法で、『てびき』は施行規則で点訳の道案内、『辞典』は語例集でこの3書を総称して「三種の神器」としてオススメしているわけです。また、『辞典』は支える会で点訳に取り組む人たちと職員には強要しますが、他では絶対にそんなことはできるはずがありません。しかし、専門家中の専門家集団で作ってくれたものですから、皆さんが活用してくださっているのだと思い、その関係者に感謝している次第です。

 善し悪しはともかくとして、特にメディアは影響力を配慮しない馬鹿げたことはしないはずです。大手誌であるがために私は訴えたいのです。叩かれた後に文句があるなら叩き返せといって済ませられる問題でしょうか? それこそ安心と安全が保障されない雑誌は怖いとしかいえません。特に狭いこの世界、お互い不信感を助長させるようなことや誤解を招くような表現には気を付けるのがメディアとして当然のことだと思います。

 最近も『視覚障害』の依頼原稿の中に「頭の良い生徒ほど勉強はしません。勉強しなくてもけっこうあん摩さんになれたのです」という一節がありました。これは私たちの盲学校時代にはよく言われたものですが、国家試験になってからはそんなことでは不可能です。しかし前後を読めば引っかからない文章でも、読んでいて深読みをしなければ「しなくても」「あん摩さん」を問題にしたくなります。その言葉がなければ文章が活きないのならともかくも、なくても成り立つものなら削除してもらった方が読者に不愉快な思いを与えないと考え、了解してもらいました。それを「自主規制」と福山氏は言うのでしょうか。

 言葉は生き物で日進月歩です。熟知度によって表記は変わると思います。また中途失明者が多くなったことで、マス空けによって理解しにくかったり読みやすかったりすると言われますから、そんなことも配慮されていくものと思います。「7マスも8マスも続けられると読みづらい」と言われるようにもなってきました。以前は「マス空けで迷ったときには続ける方がいい」といったものですが、最近は「迷ったときにはマス空けをする方が読みやすく理解しやすい」と変わってもきているようです。
 正確迅速を軸に、点字の基本である、より「書きよく、読みよく、わかかりよく」という原則を貫いていくためには、規則の検討は日頃必要欠くべからざる作業だと思います。
 本書は「万能」ではなく「拠り所」として世に送り出しているものです。水谷氏も大手のヘレン・ケラー協会の「点字専門家」も、それを百も承知で編集長は独走したのだと私は思いたいです。

 『視覚障害』をお読みの方はご承知かと思いますが、水谷氏はずいぶん本誌に協力してくれております。最近では「日本の点字は今」で8回連載で問題提起をしてくれていましたし、今回に限らず本当に本誌に数多く執筆してくれています。彼は日本ライトハウスの点字出版や点字図書館に長く勤められ、その後、請われて単身東京ヘレン・ケラー協会の『点字ジャーナル』に勤務して、最後は編集長で第一線を退かれました。私はそんなこんなで大阪東京で公私ともにお付き合いが深く、飲み友達でもあるわけです。ですから今回の問題にしても私は「なぜ」と思うくらいで、問題なのは取り上げた『点字ジャーナル』の見識だと言っているわけです。これからも氏とは飲み友でありたいと願っております。

視覚障害――その研究と情報』の2月号(No.273) 「編集後記」より転載

 今回は関係者にお詫びするとともに、私も非常に不愉快に思っていることについて経過を説明させていただきます。ことは東京ヘレン・ケラー協会発行の『点字ジャーナル』2010年11月号の記事です。「言霊文字霊」の欄で水谷昌史氏が、当センター発行の『点字表記辞典』を取り上げ、「この辞典が点字の質を低下させている」などという誹謗と中傷に満ちた記事が出ました。氏の論旨については、日本点字委員会副会長の田中徹二氏が同誌12月号で「水谷さんに物申す」として、「点訳上の悪例をいくつか挙げ、こうした分かち書きをする原因は、表記辞典の存在にあると決めつけ、その中には辞典にない例まである。それなのにあたかも辞典を見て点訳したような指摘は悪意がなければできない。『とんでもない暴言』や『あまり血迷った感情的な発言』はして欲しくない」と書いているほどに、腹立たしい内容です。しかし、私が問題にしたのは、発行人である同協会の三浦理事長と同誌福山編集長の意識と対応です。私は次のような抗議文を内容証明でお2人に2度送りました。

 「署名入りの原稿ですから筆者の責任が問われるでしょうが、私はそれよりも社会的な責任を担い、影響力の大きい貴誌が表現の自由を口実にして特定できる対象に対して明らかに誹謗・中傷に終始している記事をなぜ取り上げたのか、貴誌の使命感・倫理観・姿勢を伺いたい。この類の本は皆無に等しく、その上これだけでは完璧な点訳などは難しいと考え『表記法』と『てびき』を加えて、『三種の神器』として勧めている。本書は点字の表記で点訳者が考え込み、戸惑ってしまうので表記法に則った事例集が欲しいという声に応えて、1981年12月15日初版を発行して以来30年間、改訂と版を重ねながら今日に至っている。本書を拠り所として活用しておられる人たちに不安と混乱を持ち込み、その上編集者に対する冒涜と名誉を傷つける暴言である。また、センターの営業妨害になることは当然です。今出ているのは2008年4月1日発行の第5版4刷で編者は小林一弘、加藤三保子、河井久美子、黒ア惠津子、田中徹二、当山啓、藤野克己の諸氏です」

 これに対して、福山氏からおおよそ次のような返事が来ました。「1月号で水谷氏がお詫びと釈明をしているので決着がついたと考えている。外部のライターによる署名記事の内容について基本的な人権の侵害等以外で当該媒体の発行元や編集部が謝罪したなどということを存じません」。氏は「前例のないこと」を幾度も強調していますが、前例云々は説得力がありません。当事者は「しないだろうなあ……」と茶化したような言い方で結んでおきながら、同誌1月号では言いたかったのは「語意識にそぐわないマスあけが多く見られるので、読者や点訳者を対象に意識調査を提案したかった」と釈明しています。だからといって「辞典」を悪玉にされたのでは「悪意」と言われて当然です。それに躊躇なく乗っかった大手誌の無節操さです。「水谷・田中両氏の論旨を原文のまま月刊『視覚障害』に転載して関係者の理解を」という私の申し出にも、「ジャーナリズムの自殺行為」と断られました。同誌1月号巻頭コラム「表現の自由を守るために」で福山氏は「表現の自由は絶対不可侵」と書いています。主義主張と今回の問題を一緒くたに考えるから真っ当な回答ができないのです。三流誌なら見過ごしたかも知れませんが、大手誌が私たちにとって欠くことのできない点字の問題を「裏」も取らずに掲載して、「表現の自由を守る」などとは笑うに笑えない話です。いずれにせよ水谷氏の言う「不毛なトラブル」に巻き込まれた関係者には重ねてお詫びするしかありません。

[目次に戻る][「センターだより」トップページへ戻る]

[ホームページに戻る]